企業内での問題を内部通報しようと考えた際、通報後の不利益をおそれ、匿名での通報を希望する社員は多く見られます。
そもそも、内部通報を検討している時点で、社員が企業に対して不信感を抱いている可能性は高いものと推察されます。

そのため、内部通報をポジティブにとらえ、匿名での通報の受付体制を整えている企業は、社員に対して安心感を与えるだけでなく、対外的にも良い企業イメージをキープすることにつながります。
この記事では、匿名による内部通報が、企業にどのような効果・メリットをもたらすのかについて解説します。

内部通報制度(公益通報制度)に対する社員のホンネ

すべての社員に言えることではありませんが、自社に少なからず不満を抱いている社員は、企業が用意した制度を信用していない可能性が高いでしょう。
具体的には、自社がアナウンスしている内部通報制度を利用することに対して、以下のような不安を抱えている社員が多数派であるものと考えられます。

自社の内部通報体制を信用できない

限られた人間だけで構成される企業において、いくら窓口が「通報した事実は他部署に漏らしません」と周知していても、窓口担当者が同じ会社の社員なら、通報者が抵抗を示すのは当然のことです。
まして、通報を検討した時点で、自社に対する不信感が高まっている社員からすると、さながら罠のようにさえ思えてくるはずです。

どのように制度を運用することで、完全匿名で通報に対処できるのかをしっかり説明していなければ、社員は自社の制度を信用することなく会社を去ってしまうことでしょう。
そして、新しい会社に転職後、マスコミ等に内部告発する可能性も十分考えられます。

解雇や降格の対象になるかもしれない

社員が自社の良心を信じて内部通報を試みた場合、窓口できちんと通報内容が受け入れられているかどうかも気になるところですが、社員のキャリア構築という観点から見ても不安要素が存在しています。
通報者の存在が、人事や評価に関わる部署に知れわたることで、通報者にとって不利な人事が行われるおそれがあるからです。

社員の心の中には、「自分の良心に恥じない正しいことをした」という自負と、「同じ職場で働いていた他の社員を裏切ってしまった」という負い目が同時に生まれがちです。
同時に、窓口を介して人事部やコンプライアンス室などに情報が行ってしまうと、通報者の存在がバレてしまうだけでなく、通報がきっかけで解雇・降格といった評価につながる可能性は否定できません。

自分や他の社員たちが働きやすいようにするために通報した結果、自分の首をしめるような結果になってしまうなら、最初から通報しない方がよいと考える人が圧倒的多数でしょう。
匿名での通報を認めているとはいえ、部署間の情報網が悪い意味でガラス張りだった場合、社員が不信感を抱いて通報を控えるのは致し方ない部分があります。

人生がめちゃくちゃになるかもしれない

内部通報後、自分が不利な立場に追い込まれてしまうと、多くの通報者は自社での将来をあきらめます。
同時に、不当な評価を受けたこと・人権を侵害されたことを「内部告発」という形で世間に知らしめ、身の安全や人権救済を求めようとするでしょう。

ただ、日本で内部告発者の未来は決して明るいとは言えず、家族が重い障害を患ってしまったり、判決が出るまで数年の歳月を要したりと、何らかの代償を支払う結果になってしまうことも珍しくありません。
このような先例を踏まえ、企業への不満を外に出さずに、日々の業務に従事している社員も多いのです。

匿名による通報が認められる安心感

完全匿名でやり取りができ、自分の伝えたいことをきちんと聞いてくれる窓口があれば、社員は自分の立場が不利にならないものと考えるでしょう。
特に、通報段階で自分の名前を出さなくても通報できる場合は、社員の不安もかなり軽減されます。

公益通報者保護法では、対象となる通報を実名での通報に限定しておらず、匿名での通報も可能とされています。
企業として匿名での内部通報を認めると、社員の通報に対する精神的ハードルが低くなる効果が期待できます。

企業が匿名での内部通報体制を整えるメリット

社員の心にくすぶる不満・社内にはびこる問題を早期に発見し、自社の状況を改善するには、社員が匿名でも安心して内部通報ができる体制を整えることが大切です。
匿名での通報を認める形で内部通報体制を整えると、社員だけでなく企業にとっても以下のようなメリットがあります。

企業の責任を果たしたことを対外的に説明できる

内部通報ができる体制を整えていない企業は、万一内部告発に発展してしまった場合、企業としての責任を問われるおそれがあります。
よって、仮に告発内容の中に「企業の機密情報」が盛り込まれていたとしても、企業側が損害賠償を請求できないなど、不利な立場に置かれるかもしれません。

しかし、社員が匿名でも通報できる環境を整えていれば、告発者や他の社員に対して「通報できる体制は整えていた(社員を守るための体制は構築していた)」と反論できる余地が生まれます。
企業責任を果たしていることを対外的に説明する上で、匿名での内部通報体制を整えることには一定の効果が期待できます。

不正を行っている社員に対して、迅速に対応できる

パワハラ・セクハラの問題は、加害者の「どうせ通報されないだろう」という過信によって増長します。
完全匿名で加害者を通報できる体制が整っていた場合、身に覚えがある加害者は通報におびえるでしょうし、そのような気質がある人材は言動を改めるはずです。

また、特定の社員が横領・窃盗などの犯罪に手を染めていた場合に、通報者は報復をおそれず企業に対して通報ができます。
社員が罪を犯した事実が外部に漏れることなく処分等が終わり、通報者が安心して働ける環境を提供できることから、匿名での内部通報には社内の自浄作用を高める効果があるものと考えられます。

自社の評価を下げる機会を減らせる

社員が不正を通報する習慣が企業に根付かないと、社員による内部告発リスクが高まるだけでなく、顧客や取引先・警察の手によって、経営陣が知らなかった社員の犯罪行為が暴かれることも十分考えられます。
もし、問題が各種メディアによって報道されてしまったら、社会全体を巻き込んだ大問題として認識されてしまい、企業イメージが大幅にダウンすることは避けられません。

内部通報の段階で不正を正していれば、告発または捜査に発展する前に問題を解決できますから、顧客や取引先の評価を落とすようなリスクも減少します。
いち早く対処することで、自社が不正・問題と縁遠い企業であることをアピールできるため、社員が内部通報しやすい環境を作る上でも、匿名通報の仕組みの構築・周知は重要です。

完全匿名ヘルプラインで、内部通報窓口を設置しよう

社員の内部通報に対する警戒心を緩めるためには、社員が完全匿名でしかるべき窓口に通報できる体制を整える必要があります。
しかし、自社に何のノウハウもない中で、一から内部通報窓口を設置するのは、多くの企業にとって難易度が高いでしょう。

そのような状況で悩んでいる企業担当者様におすすめしたいのが、自力でシステム構築を必要としない、内部通報窓口の「外部委託」です。

完全匿名ヘルプラインは、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)における通報窓口義務をクリアしているサービスのため、導入後に企業の体制不備を問われる心配がありません。
通報者が所定のフォームに入力することで、担当者がヒアリング内容をまとめるのに時間をかける必要がありませんし、報告書の作成に関してもワンクリックで自動作成できます。

通報者・企業間のやり取りについては、橋渡しは完全匿名ヘルプライン側で行う形となり、すべて匿名で行われます。
また、対処に困るような事態が生じた場合は、法律・労務・経理・人事それぞれの分野のプロフェッショナルに相談が可能です。

実際に運用するのが不安な場合、30日間の無料トライアル期間で各種機能を体験することもできます。
まずは、お気軽にご相談ください。

まとめ

社員の内部通報を促すためには、他の社員に通報者のことがバレないよう、匿名通報がスムーズに行える環境を整えることが効果的です。
早期に自社の問題を発見し、解決へとつなげるためにも、企業には匿名の意見こそ大切にするスタンスが求められます。