従業員が300人を超える企業は、内部通報(公益通報)に適切に対応できるよう、必要な体制の整備が義務付けられています。
ただ、それ以下の規模の企業でも、内部通報窓口(公益通報窓口)の設置や調査・是正措置等は努力義務となっており、決して放置しておける問題ではありません。

内部通報窓口の設置は、ノウハウ・人材不足等の理由から、どのように手を打てばよいのか分からず戸惑っている企業担当者も少なくありません。
しかし、社内に設置するメリットは確かに存在しており、企業規模を問わず窓口は設置しておきたいところです。

この記事では、内部通報窓口(公益通報窓口)を社内に設置するメリットや、設置する際の注意点について解説します。

内部通報窓口(公益通報窓口)が社内に存在するメリット

内部通報窓口(公益通報窓口)が社内に存在することで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
以下、主なものをご紹介します。

社内の不正に迅速に対応できる

内部通報窓口が社内に設置されていることにより、従業員はその気になれば、社内の問題をすぐさま通報することができます。
このスピード感を実現できるのは、やはり社内で窓口を設置・運用している場合ならではのメリットであり、設置していない場合に比べると、企業は不正に迅速に対応できる体制を整えやすくなります。

窓口が設置される前まで、従業員は多大なリスクを覚悟で内部告発を行うしか選択肢がないことも珍しくなく、自分の身を守るために通報を控えていたケースは多かったものと推察されます。
しかし、社内で問題に対処する仕組みが整っていれば、自社の問題が社外に流出してしまうことを避けられますし、問題が小さい段階で叩いておけます。

データ改ざんや横領など、不正を働く側が意図的に隠そうとする問題は、気付いたときには大問題となってしまうケースが数多く見られます。
メディアを通して不正が明るみに出ることで、世間の信用を失うことにもつながりますから、社内で問題を解決するためにも窓口の存在は重要です。

不祥事を未然に防げる

内部通報窓口の存在を、社内でしっかり周知することにより、従業員の間にはいい意味での緊張感が生まれます。
不正が誰かに見張られていて、自分が問題を起こすことで処分されてしまうかもしれないと、従業員が考えるようになるからです。

残念ながら、従業員のすべてが善良な性質を持っているとは限らず、時には魔が差すことで不正を働いてしまうこともあるかもしれません。
あるいは、チーム・部署のためを思って、関係者全員が不正に手を染めてしまうような状況に陥ることも十分考えられます。

過去の大規模な不祥事に学ぶ限り、企業全体がコンプライアンスを無視して突っ走ってしまうことも、決して珍しいケースとは言えません。
しかし、内部通報窓口が機能していれば、これらの問題を未然に防ぐことができます。

大々的な内部告発に発展する前に対処できる

自社に内部通報窓口がない場合、不正に気付いた従業員は、その情報を伝える術がありません。
上司に相談しようにも、人事評価で不利になる可能性を想定して、なかなか本当のことを伝えられない従業員は多いはずです。

すると、従業員の中に、内部告発を検討する人物が出てくる可能性があります。
経営者が不正に気付いていない場合、行政機関・マスコミを通して真実が明らかになることは、まさに青天の霹靂といったところでしょう。

このような事態を防ぐには、未然に不正を察知できるよう、内部通報窓口を社内に設置することが有効です。
自社独自の取り組みとして、内部通報の内容によっては報奨金を出すなど、積極策を講じるとさらに効果的です。

ちなみに中国では、企業の不正告発を奨励する制度が設けられており、告発者には最大で日本円にして1,700万円ほどの報奨金が支給されます。
内部通報を行うことに対するメリットが明確になれば、あえてリスクを冒して内部告発を試みる従業員はいなくなるはずです。

自社の信用を高められる

自社に内部通報窓口を設置すること自体が、企業にとってのメリットとなる可能性もあります。
消費者庁の「平成28年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」を見る限り、実効性が高い内部通報制度を整備・運用している事業者との取引を歓迎する事業者は、圧倒的多数派となっています。

報告書によると、他の条件が同じであれば「内部通報制度を整備・運用している事業者と取引したい」と回答した事業者は、全体で89.4%となっています。
SNS等の利用者が増える中で、企業の不祥事が拡散するリスクが増大していることから、内部通報窓口の設置は企業の信用度を図る上で重視されているものと考えられます。

内部通報窓口を設置・運用していることを、企業が取引先や世間に対してアピールするだけでも、経営上のメリットがある時代になったと言えます。
仮に、自社のスタッフが善良な人ばかりだったとしても、内部通報窓口は設置しておいた方が有利に働くものと推察されます。

内部通報窓口(公益通報窓口)を設置する際の注意点

自社に内部通報窓口(公益通報窓口)を設置する場合、通報者の保護は大前提となるため、通報者の心配を取り除いておく必要があります。
以下、内部通報窓口を設置する際の注意点をいくつかご紹介します。

完全匿名でやり取りできる環境を整備する

消費者庁の民間事業者向けガイドラインには、個人情報保護の徹底・通報対応の実効性を確保するため、窓口では匿名の通報も受け付けることが必要であると記されています。
また、匿名の通報であっても、通報者と通報窓口担当者が、双方向で情報伝達できる仕組みを導入することが望ましいとされています。

つまり、内部通報窓口を設置する場合、実質的に「完全匿名」でやり取りできる環境の整備が重要になります。
当然ながら、通報があったことを秘密にする必要がありますし、通報者を特定しようとする行為も防止しなければなりません。

具体的には、通報の専用回線・個室または事業所外での面談等ができる環境を整えなければ、完全匿名でのやり取りは難しくなります。
こういった、通報者が安心して通報できる環境を整備することは、企業にとってもかなりの負担となるでしょう。

通報者が安心して通報できるよう周知する

通報者の匿名性が守られる環境を構築できたら、次は従業員の心に企業に対する不信感が生まれないよう、安心して通報できる環境が整ったことを周知します。
通報窓口・受付の方法を明確に定めた上で、経営幹部も含むすべての従業員に対して、十分かつ継続的に周知する必要があります。

特に、通報者の所属・氏名等が職場内に漏れてしまうことは、絶対に避けなければなりません。
企業には、以下のような措置を講じて秘密保持の徹底を図ることを、周知徹底することが求められます。

○情報共有が許される範囲を必要最小限に限定する
○通報者の所属・氏名等や当該事案が通報を端緒とするものであること等、通報者の特定につながり得る情報は、通報者の書面や電子メール等による明示の同意がない限り、情報共有が許される範囲外には開示しない
○通報者の同意を取得する際には、開示する目的・範囲、氏名等を開示することによって生じ得る不利益について明確に説明する
○何人も通報者を探索してはならないことを明確にする

※参照元:公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン

通報を受けた後で対処できる仕組みを作る

内部通報制度は、通報をどう受け付けるべきかを考えるためだけの制度ではありません。
受け付けた後は、通報内容の真偽や被害の程度などを調査しなければなりません。

不正行為が発覚した場合は、それらの行為をどう処分するかについても考える必要があります。
専門的な知識・スキルのない人材に調査や処分を任せることで、新たな経営リスクが生じないよう、あらかじめ複数のケースを想定して対処方法を考えておくことが大切です。

内部通報窓口(公益通報窓口)を外部委託する手段もある

自社で匿名通報を受け入れる体制を整えたり、内部通報に対応できる人材を育成したりするのは、時間と労力を要します。
しかし、内部通報窓口は外部委託することもできるため、運用経験の豊富な外部委託機関を活用することで、自社の負担を軽くすることができます。

完全匿名ヘルプラインは、通報者・企業ともに完全匿名で利用できる内部通報窓口ツールです。
通報者はWebフォームでのやり取りを通して通報でき、企業側は管理ページから通報内容の確認や通報者への質問等が可能です。

電話対応や面談のように、担当者が常時待機する必要がないため、限られた人員を効率的に活用できます。
自社で内部通報窓口の設置や管理をすることに不安を感じている経営者様・法人担当者様は、ぜひ一度ご相談ください。

おわりに

内部通報窓口(公益通報窓口)を社内に設置することで、企業の不正への対応力が向上し、世間や取引先からの信用が高まるメリットがあります。
しかし、自前で体制を整えることは決してかんたんではありませんから、自社に窓口を設置しようと考えているなら、外部の専門サービスを頼ることも視野に入れておきましょう。