公益通報(内部告発)とは、企業や自治体などで行われた不正・法令違反につき、内部に属する人物が外部に向けて問題を公表することをいいます。
過去には、食品産地の偽装や無資格者による商品検査、利益の水増しなどがマスコミ等を通じて報道されました。

公益通報は、企業や経営者の未来だけでなく、経営者の家族や企業で働く社員たちの人生までも滅茶苦茶にしてしまうリスクがあるため、企業としては何としても社内で問題を食い止める必要があります。
この記事では、過去に大問題へと発展した企業・自治体等の公益通報について、当時世間を大いに賑わせた事例をいくつかご紹介します。

公益通報(内部告発)が世間を大きく賑わせた企業

まずは、不正が公益通報によって明るみに出たことで、世間を大きく賑わせる結果になった企業のケースをいくつかご紹介します。
いずれのケースも、問題が起こった当時は大々的に報道されたため、企業経営の中で活かせる部分は多々あるはずです。

食肉偽装事件(ミートホープ)

ミートホープ株式会社は、北海道苫小牧市に本社を持つ、食肉加工卸会社でした。
道内で業界1位の売上を誇っていた時期もありましたが、以下のような数々の悪質な偽装を何十年にわたり行ってきたことが、内部告発によって明るみに出ました。

・牛肉コロッケと偽り豚肉を混入させる
・家畜の血液により商品を着色
・横流しされた廃棄処分品につき、賞味期限を改ざんして再販売 など

一つひとつの不正が、思わず耳を疑うような深刻なもので、見かねた同社常務の赤羽喜六氏は保健所・役所などに告発を試みましたが、当初は農林水産省・北海道新聞社・NHKなどに黙殺されました。
その後、告発を知った朝日新聞の調査結果が報じられると、全国を揺るがす大騒動に発展します。

最終的にこの事件によって、元社長である田中稔氏は、懲役4年の実刑判決を受けています。
会社は倒産し、社員は全員解雇という悲惨な結末を迎えます。

そして、告発した赤羽氏も世間から非難される結果となり、親族や知人も離れてしまいます。
この事件は、その後の行政機関・メディアのあり方を変えた事件となりました。

リコール隠し(三菱自動車)

2000年6月のこと、三菱自動車では社員の匿名による内部告発により、リコールにつながる不具合を20年にわたって隠ぺいしていたことが発覚しました。
その際、政府による立ち入り検査も行われ、同社は再発防止策も発表しています。

それから1年以上が過ぎた2002年1月10日、神奈川県大和市で、重機を運ぶ三菱自動車製の大型トレーラーから走行中にタイヤが外れ、転がったタイヤにぶつかった女性が亡くなるという事故が発生しました。
この事故が起こった際、三菱自動車は一貫してユーザー側の整備不良としていましたが、同社から商用車部門を引き継いで分社化した三菱ふそう・トラックバスは、2004年3月に製造者責任を認めて国土交通省にリコールを届け出ています。

その後、関係者は道路運送車両法違反・業務上過失致死容疑で逮捕され、法人である三菱自動車も刑事告発される結果となりました。
また、調査を進める中で、三菱自動車が組織的に事実を隠蔽して虚偽報告を繰り返していることが分かり、その内向きの姿勢が批判されました。

世間で批判されたのは、極論を言えば「口を動かしてばかりで行動に移していない」点であり、そのせいで三菱自動車の評判は地に落ちたと言わざるを得ません。
かつて一世を風靡した「ランサーエボリューション」シリーズが生産終了となってしまったのも、この時期の不祥事がボディブローのように効いた結果の一つなのかもしれません。

不正会計事件(東芝)

日本の総合電機メーカーとして知られている東芝は、2008~2014年までの長期間、合計1,500億円以上の利益をカサ上げするという利益操作を行っていました。
本来であれば、監査法人が発見しなければならなかったこの問題は、2015年2月に証券取引等監視委員会に寄せられた内部告発がきっかけで発覚しました。

第三者委員会によって、以下4つの具体的な手口が明らかになっています。

・インフラ事業における工事進行基準(工事損失引当金の未計上)
・映像事業の経費計上(取引先に請求書の発行などを遅らせてもらい、広告費等を先送り)
・半導体事業の在庫評価(損失を認識していたのに在庫廃棄まで評価損を計上しなかった)
・パソコン事業の部品取引(一時的な利益のカサ上げ)

また、不適切会計の原因について、第三者委員会は「経営トップを含めた組織的な関与」と結論付けました。
その結果、田中久雄元社長は引責辞任、当時の副会長・相談役も辞任となりました。

公益通報(内部告発)が世間を大きく賑わせた自治体・組織

公益通報の対象となるのは企業だけでなく、自治体や組織についても当てはまる場合があります。
以下、内部告発という形で問題が発覚した例をご紹介します。

町役場におけるパワハラ問題(山口県田布施町)

山口県田布施町で起こった、かつて納税課で勤務していた職員が、不本意な形で他部署に異動させられた問題です。
問題の発端は、職員が固定資産税を過大に徴収していたミスに気付き、その旨を税務課の課長らに報告したことです。

報告した職員が、その後対応がなされなかったため町議に告発したところ、他部署への異動を数回命じられた後、1人だけの部署に移動させられました。
その結果、TV番組などでも「報復人事」として取り上げられ、住民からも問い合わせが殺到したり、田布施町に爆破予告メールが届いたりする事態となりました。

最終的に、当該職員を複数の職員がいる部屋に移し、当時の課長と町長の減給という形で、この問題は一応の解決を見ました。
ただ、全国に悪評がとどろいた影響は、今なお大きいものと推察されます。

道警裏金事件(北海道警察)

北海道警察旭川中央警察署が不正経理を行っていたことが、内部告発によって明らかになった事件です。
内部告発者が、偽造された会計書類をTV局と政党に送ったことが発端となり、その後一部を除く各部署・各課・各警察署で同様の問題が起こっていたことが発覚しました。

この事件における裏金とは、いわゆる警察組織内でのマネーロンダリングのようなもので、捜査費・旅費などの費目が幹部への闇手当・飲食費といったお金に化けたものです。
組織内で、本来なら捜査員に支給されるべきお金が、不正に幹部の懐に入るというわけです。

事件が報道された当初は、道警は裏金の存在を認めていませんでした。
しかし、元道警幹部の原田宏二氏が裏金の存在を証言すると、一転して道警は裏金を認め、道警本部長は北海道議会で謝罪しました。

道警の裏金問題は、日本警察始まって以来の不祥事とも言われ、当時の道警職員が1万人だったのに対して、処分を受けた職員はおよそ3,000人という規模でした。
また、最終的に総額9億6,000万円以上の金額が国庫に返納されています。

公益通報(内部告発)のリスクを減らすためには

ここまでお伝えしてきた通り、外部の報道機関等に公益通報(内部告発)という形で組織の不正が伝えられると、その問題は全国に波及するおそれがあります。
公益通報には、組織の仕組みを大きく変えてしまったり、組織を瓦解させてしまったりする力があるのです。

一度民衆の目に不正が映ると、それは「悪」として断罪されてしまう可能性が高いでしょう。
よって、できる限り組織内に問題をとどめるため、自浄作用を強化する必要があります。

そこで検討したいのが、完全匿名でのやり取りを実現した、内部通報窓口ツールです。
一例として、完全匿名ヘルプラインをご利用いただくと、誰かに不正を相談できない社員が静かに声を上げられるようになります。

経営者は、通報者と匿名のままやり取りができるので、問題だけを把握して対策を講じることができます。
対応に困る案件については、弁護士・社労士の相談サポートも受けられます。

経営者が不正に気付かないまま、社員の内部告発によって深刻な事態を招くことのないよう、適正に機能する内部通報窓口を設けることは重要です。
御社の未来を守るため、完全匿名ヘルプラインの導入をご検討ください。

まとめ

公益通報(内部告発)は、一度報道機関等に情報が渡れば、全国的に問題が拡散されてしまうおそれがあります。
当然、企業や組織にもたらす影響は甚大なものなので、極力組織内で問題を解決できるような仕組みを設けることが大切です。