ビジネスシーンに限らず、様々な場面で聞かれるようになった「コンプライアンス」という言葉ですが、実際にコンプライアンスの強化に向けて何をすればよいのか、イメージするのが難しい方も多いのではないでしょうか。
この記事では、多様な意味合いで解釈されるコンプライアンスとは何なのか、わかりやすく解説するとともに、自社のコンプライアンスを強化するための方法についてもご紹介します。

実は幅広い「コンプライアンス」の意味

カタカナ語の中には、一つの単語に複数の意味合いが込められているもの、日本社会であまり馴染んでいないものがあります。
そのような単語の一つに、コンプライアンスは分類されるかもしれません。
まずは、コンプライアンスという単語が、そもそもどんな意味を持っているのかについてご紹介します。

コンプライアンスとは

コンプライアンスは、英語で「compliance」とつづり、日本語に訳すと「遵守」となります。
ビジネスシーンでは「法令遵守」といったニュアンスで用いられます。

基本的には「会社で定めている規則・法令・社会のルールを守ること」と理解しておくと、誤解の心配はないでしょう。
いわゆる、ニュース番組や新聞記事などで見かける「企業コンプライアンス」の意味合いです。

使い勝手がいい「コンプライアンス」という表現

コンプライアンスという表現は、ビジネスシーンでかなり柔軟に使われます。
企業がSNSの活用を試みた結果炎上し、コンプライアンス上の問題があったことを理由に、発信内容を削除する例は少なくありません。

また、TVのバラエティ番組の中で、登場人物が放送禁止用語を発した際に「コンプラ」という字幕が出ているケースを見かけた方もいると思います。
このように、コンプライアンスという表現は使い勝手がいいため、その分複数の解釈で使用されていることから、本来の意味をなかなかつかみにくいものと推察されます。

コンプライアンスと似た意味合いの言葉

ビジネスシーンで、コンプライアンスに似た意味合いで使われている言葉も多いため、余計に混乱してしまう人もいるようです。
例えば、企業統治を意味する「コーポレート・ガバナンス」という言葉は、経営者を監督して株主の利益最大化を目指す仕組みのことを意味します。

コンプライアンスとコーポレート・ガバナンスは、ともに企業の健全化を進める上で重要な概念ですが、健全化の対象となる存在が異なります。
コンプライアンスは、経営者が社員や会社を健全化する点に着目した概念ですが、コーポレート・ガバナンスは取締役会等が経営者(業務執行者)を見張る意味合いが強い概念です。

また、コンプライアンスを実践するために、適正な業務を進められる体制を整えることを内部統制といいます。
内部統制をする目的がコンプライアンス、コンプライアンスの手段が内部統制という意味合いで、それぞれビジネスシーンでは非常に混同しやすい単語です。

なぜ、企業にとってコンプライアンスが重要なのか

コンプライアンスという概念は、それだけビジネスにおいて重要だからこそ、様々な意味を含む言葉として解釈されているものと推察されます。
それでは、なぜ企業にとって、コンプライアンスはそれほど重要になったのでしょうか。

社会全体の不正を見る目が厳しくなった

企業の不正が内部告発等で世の中に知れ渡ると、不正を起こした企業に対して、多くの人はシビアな評価を下します。
また、SNS等の手段によって、不正は瞬く間に拡散されるようになりました。

極端に攻撃的なコメントを発するSNS等のユーザーは少数派だったとしても、ネガティブな情報に触れる中で「この企業の商品はもう買わない方がいい」と思うユーザーが増えると、大幅な売上の減少につながるおそれもあります。
そこで、経営者は企業・社員がコンプライアンスを徹底する必要性を訴え、不祥事が起こるリスクを減らそうとします。

規制緩和に伴う競争の激化

日本で規制緩和が進み、市場競争が激しくなる中で、多くの企業は何とかして売上を確保しようとしました。
一例として、値下げ競争は様々な業界で行われましたが、その代償として諸々の不正が明るみになったのも記憶に新しいところです。

大手メーカーが産地偽装に関わった例としては、内部告発が不幸な結果を生んだ雪印乳業の牛肉偽装事件が有名です。
工事発注を巡る収賄容疑が報道されることも珍しくなく、会社が利益を出すためなら法律・倫理を無視しても構わないと考える企業が増えたことで、多くの消費者が不安を感じていました。

そこで、自社や自社の商品・サービスが安心・安全なものであることを説明するとともに、自社で不正を行っていないことを示すため、企業コンプライアンスが重視されるようになったのです。

公益通報者保護法の存在も大きい

法律の面でコンプライアンスを紐解くと、2006年に施行された「公益通報者保護法」の存在も大きいでしょう。
2020年には法改正も行われ、

・内部通報への適切な対応ができる体制を整備する義務
・企業の違反に対する行政措置
・情報の守秘義務に違反した場合の刑事罰

上記のような、内部通報制度の構築に関する企業側の義務やペナルティが強化されました。

企業として、関係者が不正を通報しやすい環境を整えておかないと、将来的に社員の不正が世間に合法的に告発されてしまう可能性が高まります。
こうして、社員一人ひとりが日々の業務で不正に手を染めないよう、企業がコンプライアンス教育を実施する重要性が増していきました。

企業がコンプライアンス違反のダメージを受けないために

コンプライアンス違反は、ゼロに抑えるための施策を講じることも大切ですが、それ以上に「誰かが違反していたらどうするか」を考えて、何らかの施策を講じることが大切です。
以下、自社のコンプライアンスを強化する観点からできる対策について、いくつか主なものをご紹介します。

社内規定やマニュアルの作成

コンプライアンスの徹底と言われても、多くの社員は何を・どうすればコンプライアンスの徹底が実現できるのか、具体的にイメージするのが難しいものです。
しかし、顧客と直接やり取り現場から再教育を行わなければ、知らず知らずのうちにコンプライアンス違反が積み重なり、やがて大事件として報道されることも十分考えられます。

実務レベルで法律違反・規則違反を防ぐためには、新たな社内規定やマニュアル自体を作成して、実際の業務の流れから違反事項を事前に取り除いてしまうことが有効です。
従業員研修を行うことも、スタッフ全員に正しい作業フローを伝達するのに役立ちます。

コンプライアンスに関するソリューションを導入する

企業がコンプライアンス体制を維持する上で重要なのが、年々起こる法改正に対応することです。
法務担当者がいない企業はもちろんのこと、法務部がある企業であっても、自社に関連する法令すべてを逐一チェックするのは、非常に骨が折れる作業です。

そこで、例えばコンプライアンス自動化ツールを導入して、自社に関連する法改正の情報を自動的に集めるようにすると、法律の専門家ではない担当者も業務手順等の見直しがしやすくなります。
マンパワーに頼らない仕組みを回すことは、スタッフの負担を減らしつつ、隠れたリスクをあぶり出すことにもつながります。

信頼できる外部サービスに内部通報窓口を委託する

内部通報窓口を自社に設置しなければならない場合、自力で何のノウハウもないまま窓口を運用することは、通報者の個人情報が漏洩してしまうなどのリスクがあります。
そこで、あえて信頼できる外部サービスに通報窓口を委託することで、自社の負担を減らしつつ、従業員が安心して通報できる窓口を設置することができます。

窓口を設置した後で問題が通報されなかったとしても、窓口を設置すること自体が、コンプライアンスへの意識が高いことを証明してくれます。
企業として、不正を断固認めないスタンスを貫く意味でも、内部通報窓口ツールの導入をおすすめします。

まとめ

完全匿名ヘルプラインでは、通報者と企業担当者だけが閲覧できるシステムを運用することで、これまでに20万件以上の通報を守り通した実績がございます。
システムの開発・運営は、外部委託することなく自社ですべて行っておりますので、例えば海外の業者に情報が漏洩するような事態が発生することはありません。

コンプライアンス意識を高めるためには、活用するツールの質の高さにも目を向ける必要があります。
自社のコンプライアンス強化をどうすべきか検討している企業担当者様は、ぜひ一度完全匿名ヘルプラインをご検討ください。