企業の不祥事は、ニュースで報道されるだけでなく、SNS等でもスピーディーに拡散されるようになりました。
不祥事が発覚するルートの多くは内部告発のため、経営者は企業内で起こっている問題を知らないまま、ある日記者会見の日を迎えてしまうことも十分考えられます。

企業不祥事は、消費者庁など各省庁でも目を光らせている問題であり、企業が早い段階で経営リスクに気付くためには「内部通報制度(公益通報制度)」の構築が必要です。
この記事では、内部通報制度を自社で整備・運用する際のポイントについて、改正公益通報者保護法の存在にも触れつつ解説します。

内部通報制度の整備・運用にあたり知っておきたい「改正公益通報者保護法」

企業が速やかな内部通報制度の整備・運用を求められる背景には、改正公益通報者保護法の存在があります。
まずは、改正公益通報者保護法について、概要や目的などを確認しましょう。

改正公益通報者保護法とは

改正公益通報者保護法は、企業の不祥事によって国民の生命・身体・財産その他の利益への被害拡大を食い止めることを目的とした、企業の不正を通報する通報者を保護するための法律です。
法律は、2020年6月12日に公布され、施行は2022年6月1日からとなっています。

改正公益通報者保護法の施行によって、企業には内部通報に適切に対応できる体制構築が求められるようになりました。
ただし、従業員が300人以下の中小企業に関しては、努力義務となっています。

具体的な義務としては、大まかに以下の2つがあげられます。

・公益通報対応業務従事者を指定すること
・内部公益通報に対応できる体制の整備、その他必要な措置をとること

また、上記の義務を満たすためには、企業は以下の体制を構築する必要があるものと考えられます。

・内部通報に対応できる仕組みを作ること
・経営幹部から独立したルートで通報の受付、調査是正の仕組みを整備すること
・中立を保てる従事者を据えること
・通報しやすい、安心できる環境を整備すること

具体的な構築・整備の流れについては企業に一任されている部分が多いことから、どう対応すべきか悩んでいる企業は多いものと推察されます。

改正公益通報者保護法が施行された背景

世界各国と比較して、比較的企業モラルが高いとされる日本でも、企業の不祥事が話題となることが増えてきています。
パワハラ・セクハラに関する問題だけでなく、お金に関すること・倫理に関することなど、幅広い観点から企業の不祥事が報告されています。

リコールに相当する不良品が出荷されているのに、リコールを行わない企業。
産地を偽装してブランドをアピールする企業。
やらせや演出によって、最終的に出演者・スタッフの命や名誉を奪ってしまった企業。

日本でこういった問題が生じている背景には、企業内に「問題を知っていても社員がそれを通報できない」事情があるためです。
具体的には、組織の違法行為を明るみに出すことで、通報者が事業主から不当な扱いを受けること・解雇や降格の対象となることなどがあげられます。

勇気を出して内部告発したにもかかわらず、マスコミを介して世間からのバッシングを受け、大きなダメージを受けた人も少なくありません。
そこで、改正公益通報者保護法の施行により、通報者は以下の通り保護されるようになりました。

・通報を行った人に経営者が解雇を言い渡すのは無効
・通報を理由とした降格、減給、退職金の不支給、役員の報酬減額等、不利益な取り扱いは禁止
・通報を理由に経営者が損害賠償を請求することはできない

よって、企業は上記のルールを理解した上で、内部通報制度を充実させていく必要があります。

内部通報制度(公益通報制度)を整備・運用するメリット

内部通報制度を整備・運用することは、労働者の働きやすい環境を維持するだけでなく、企業にとっても様々なメリットがあります。
以下、主なものをご紹介します。

不正を早期発見しやすくなる

内部通報を抵抗なく行えるような制度・体制の構築に成功すると、労働者は自社の問題を報告しやすくなります。
これはつまり、経営者にとっては不正を早期に発見しやすくなることを意味しており、自社の問題を速やかに解決できる点でメリットがあります。

具体的な例としては、以下のようなものが考えられます。

・横領が発生した際、少額の時点で対処ができる
・パワハラが生じた際、被害者のダメージを最小限にしつつ、加害者の迅速な人事に反映できる

内部告発にまで発展するリスクを減らせる

社内において問題となる行為が発生した際、内部通報の仕組みが整っていないと、従業員が社外に向けて通報を検討する可能性があります。
すなわち、行政機関・報道機関に対して直接不正を内部告発するおそれがあることから、その前段階として通報窓口を用意しておくことにより、企業のイメージダウンを防ぐことができます。

なお、内部通報と内部告発の意味合いは、以下のような違いがあるため注意が必要です。

・内部通報:企業内の問題について、原則として企業の内部(経営陣等)に通報すること
・内部告発:行政機関、報道機関、警察などに、自社の問題を伝え告発すること

内部通報の時点で、適切かつ迅速な対応をとっていない場合、自社の対応では問題が解決しないと判断した従業員は、内部告発を検討するでしょう。
その後、企業は多方面で説明を求められることになり、関係者が逮捕される未来も十分考えられます。
よって、企業としては「社内で問題を完結させる」ために、内部通報制度を整備することが必要なのです。

企業の評価が高まる

「人が集まれば不正が起こる」という性悪説にもとづく企業運営は、自社の企業価値を高めることにつながります。
周囲から内部通報制度がしっかり運用できている会社だと認知されれば、社員も集まりやすくなりますし、取引先も安定した経営を行っている企業だと考えるようになるでしょう。

実際、長期にわたり取引ができるものと考えていた企業が、ある日突然内部告発によってガタガタになってしまうと、その後の自社の業務にも影響は避けられません。
共倒れを避ける観点から、今後は内部通報制度の整備・運用状況につき、取引を継続する条件として考える企業が増えていくものと推察されます。

内部通報制度(公益通報制度)を整備・運用する際に押さえておくべきポイント

実際に内部通報制度を整備・運用するためには、以下のポイントに注目して準備を進める必要があります。

・「通報があったこと」も含め、通報者の秘密を守ること
・通報窓口の環境分離を徹底すること
・内部通報制度運用規定に「不利益を受けないこと」を明記すること
・専門家の意見を聞きつつ調査を行うこと

上記の条件を満たしつつ、すべての対応は、万事速やかに行われなければなりません。
しかし、大企業はともかくとして、中小企業の規模で通報を受け付けられる環境を整えることは、決してかんたんなことではありません。

自社で体制構築が難しいなら完全匿名ヘルプライン

自社で内部通報制度の体制構築が難しいと感じている企業担当者様は、完全匿名ヘルプラインをご検討ください。
完全匿名ヘルプラインを使うことにより、社内のコンプライアンス違反・規則違反・不法行為などについて、通報者は完全匿名で自社への通報が可能です。

完全匿名ヘルプラインが用意するプラットフォーム上でのやり取りによって、パワハラ・各種ハラスメント・コンプライアンス違反・社内不正など、実名での通報を避けたいケースで、匿名での相談ができる体制を整えることができます。
また、経営者の方が相談内容に対してどう対応すべきなのか、外部の専門家と連携が取れる仕組みが構築されているため、専門家からのサポートも受けられます。

Webシステムセキュリティに関しましては、警視庁が実施したベネトレーションテスト(システムの脆弱性をチェックするためサイバー攻撃を繰り返すもの)をクリアしています。
完全匿名で社員を守り、企業内で起こる不正に迅速に対応できるよう、完全匿名ヘルプラインをぜひご活用ください。

まとめ

内部通報制度(公益通報制度)の構築にあたっては、ノウハウの構築がない企業が多いことから、制度導入時の課題となることも珍しくありません。
しかし、国は外部に社外通報窓口を委託することを認めているため、あえて自力で体制構築に動かず、プロの力を頼ることが、内部通報制度を充実させるための近道と言えるでしょう。