パワハラ防止法の本格的な施行にともない、各種ハラスメントに対する企業の意識も変わってきています。
特に、ハラスメントの種類は昨今増え続ける傾向にあり、国も日々年々新しい対応を進めていくことが予想されます。

増え続けるハラスメントに対して、企業や職場を守るためには何ができるのでしょうか。
この記事では、各種ハラスメント行為への対応に悩む経営者・人事職向けに、ハラスメントの概念や種類、企業が真に恐れるべきハラスメントとその対策についてご紹介します。

ハラスメントの種類は増え続けている

各種ハラスメントの種類は年々増え続けており、具体的な法整備まで進んでいないものを含めると、50種類とも86種類とも言われています。
いきなりすべてのハラスメントを網羅するのは難しいので、まずはそもそも「ハラスメントとは何か」という点にフォーカスしていくと、各種ハラスメントに対する理解が進むことでしょう。

ハラスメントは日本語で「嫌がらせ」の意味

ハラスメント(harassment)という単語は、日本語に訳すと「嫌がらせ」となります。
そのため、行為者の意図とは関係なく、相手が不快に思ったり不利益と感じたりする行為であれば、すべての行為がハラスメントになる可能性があります。
その一方で、客観的に合理性を認められる行為であれば、基本的にはハラスメントという扱いにはなりません。

人それぞれ「嫌がるポイント」は違う

ハラスメントという概念を難しくしているものは、誰かから受けた行為に対して、人それぞれ「嫌がるポイント」が異なる部分です。
例えば、比較的最近のハラスメントとして「飯ハラスメント(メシハラ)」というものがあり、食事をすすめた際にすすめられた側がそれを負担に感じると、ハラスメントとなります。

この場合、食事をすすめた側の多くは、ハラスメントというよりは「美味しいからたくさん食べて欲しい」といったポジティブな気持ちでご飯をすすめています。
しかし、受け手が内心「もうお腹いっぱいだ」と感じていたら、残念ながらそれはハラスメントとなってしまうリスクがあるのです。

誰もが嫌がることと、特定の人が嫌がることをどう区別するか

このように、ハラスメントという概念は、掘り下げていくと分類が非常に細かくなります。
最低限、誰もが嫌がることと、特定の人が嫌がることを区別して考えなければ、社会が成り立たなくなってしまいます。

とはいえ、パワハラのように「誰が見てもハラスメントだと分かる」事案に関しては、厚生労働省でも明確な類型が示されています。
今後のことはさておき、経営者・人事担当者は、とりあえず企業・職場で起こり得るハラスメントについて理解を深めることが必要になるでしょう。

企業や職場で特に注意すべきハラスメントについて

企業・職場は、出身地も信条も異なる人が集まって仕事をする場所ですから、どうしても衝突が起こりやすい部分は否めません。
以下に、2022年現在、企業や職場で特に注意すべきハラスメントについてご紹介します。

セクシャルハラスメント(セクハラ)

性的な嫌がらせのことで、一般的には男性から女性に対して行われているイメージが強いものの、女性から男性に対して、もしくは同性同士で行われることもあります。
仕事上の上下関係・利害関係を利用したセクハラは「対価型」に、性的な発言や行為で職場環境を悪化させるセクハラは「環境型」に分類されます。

パワーハラスメント(パワハラ)

職務上の地位・役職といった優位性を盾に、他者に対して嫌がらせをするハラスメントのことです。
他者に対する過剰な命令のほか、怒りを他者にぶつけたり、殴る・蹴るなどの暴行を加えたりするケースが該当します。
多くの場合、上司から部下に対するハラスメントがイメージされますが、部下から上司へのハラスメントも存在します。

モラルハラスメント(モラハラ)

倫理や道徳の観点から問題のある行為をする嫌がらせのことで、全体的に陰湿な傾向があります。
無視や暴言だけでなく、不機嫌な態度を演出するなど、相手が不快になるような諸々の言動がモラルハラスメントとなります。
職場はもちろんのこと、家庭でも問題となるハラスメントです。

アルコールハラスメント(アルハラ)

お酒が飲めない人・苦手な人に対して、飲酒の強要などを行うタイプのハラスメントです。
急性アルコール中毒によって死者が出る可能性もあることから、企業にとっては重々注意したいハラスメントと言えるでしょう。
ちなみに、宴席でお酒以外が用意されていない場合も、アルコールハラスメントに該当します。

テクノロジーハラスメント(テクハラ)

ITスキルや知識のある人が、ITに対する理解に乏しい人・ITが苦手な人を責めたり見下したりして、不快な気持ちにさせることが該当します。
年齢を問わず、技術差・知識差のある環境では起こり得るハラスメントのため、学習環境の充実が解決の糸口となります。

マタニティハラスメント(マタハラ)

妊娠・出産・育児休業を理由とした不当な扱い、嫌がらせが該当します。
同僚や上司の嫌味だけでなく、妊娠をきっかけにした降格も、マタハラに分類されます。
なお、父親が育児休暇を取るケースは、パタニティハラスメント(パタハラ)と呼ばれ区別されます。

スメルハラスメント(スメハラ)

体臭・口臭・香水・柔軟剤などの臭い(スメル)によって、周囲が不快になるハラスメントです。
臭いの放置はオフィスで問題になるものの、病気等が原因の体臭・口臭の場合、セルフケアにも限界があるため、企業としては席替えや空気清浄機などの活用も視野に入れる必要があります。

ロジカルハラスメント(ロジハラ)

正論をかざして相手を追い詰める行為が該当します。
論理的であること自体は業務上必要なことですが、いわゆる「論破」を目的としたやり取りや、反対意見を抑え込むために正論を押し付けることはNGとなります。

リストラハラスメント(リスハラ)

企業が積極的に関与しないよう注意したいのが、リストラハラスメントです。
企業の方針に背いたことを理由に違う部署へ異動させる・仕事を奪って自主退職を強要させるなどの行為は、後々企業の信用を失墜させるリスクがあります。

企業・職場で注意しなければならない「セカンドハラスメント」

諸々のハラスメントは、極端な話、社内で解決できれば大きな問題に発展することは少ないでしょう。
しかし、社内でハラスメント被害者側が否定されてしまう「セカンドハラスメント」が起こってしまった場合、自社の問題が社外に漏れ出てしまうおそれがあり、経営者・人事担当者は十分注意が必要です。

自分の会社が「信用できない」と知ったときの社員の行動とは

自社でセカンドハラスメントが起こってしまうと、これまで自社を信用していたハラスメント被害者は、社外に自分の問題を発信して状況を改善しようと考える可能性があります。
そして、ハラスメント被害者がマスコミ・各種メディアへの内部告発を行ってしまうと、自社の問題は全国的に広まり、顧客や取引先からの信用を失う結果につながります。
このような結果を引き起こさないためには、内部通報制度を充実させる必要があります。

「内部告発」と「内部通報制度」の違い

内部告発とは、従業員や経営陣・企業が行っている法令違反等の不正につき、企業内にいる人間が外部の監督庁および報道機関に通報することです。
これに対して内部通報制度とは、法令違反等の早期発見・未然防止を主な目的として、社員が社内で整備された信頼できる窓口に通報できる制度のことを指します。

完全匿名ヘルプラインで企業と社員を守ろう

内部告発に発展する前・すなわち内部通報の段階で、企業が社内で起こったハラスメントについて知ることができれば、社外に問題が漏れる前にハラスメントの被害者・加害者を特定し、適切な対応を講じることが可能です。
完全匿名ヘルプラインを利用すれば、社員は完全匿名で問題を通報できるため、通報した社員を保護した上での問題解決が実現します。
企業のリスクを回避しつつ、社員の働きやすい環境を充実させるため、ぜひ完全匿名ヘルプラインをご活用ください。

まとめ

以上、増え続けるハラスメントの種類について、主に企業で注意すべきものをいくつかご紹介してきました。

今回ご紹介したハラスメント以外にも、世間ではたくさんのハラスメントが定義され続けており、将来的に社会全体のルールが大きく変わることも十分考えられます。
経営者・人事担当者の方にとっては胃の痛くなる問題ですが、早急に向き合うことによって、ピンチをチャンスに変えることができるはずです。